静岡県牧之原市認定こども園【通園バス置き去り園児死亡】なぜ起こったのか?関連記事まとめ

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投稿日:2022年9月9日 | 最終更新日:2022年10月1日

2022年9月5日。静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」の送迎バス内に置き去りにされ3歳の園児が亡くなりました。

2021年にも同様の事件が福岡県の「双葉保育園」で起こっていました。なぜ川崎幼稚園ではこの悲劇の教訓をいかせなかったのか。

どのようにして置き去りが起こったのか?

静岡県こども未来局の記者会見

  • バスの運転手:園長(担当者が病欠の為、臨時で交代) 添乗:70代派遣女性職員1名(臨時)
  • バスに乗車していた園児は6名(2歳児1名、3歳児2名、5歳児以上3名)
  • 添乗の女性職員は布団などの荷物を持ちながら2歳児を降ろし、他の子には自分で降りるよう声がけのみ(全員降車したかの確認なし)
  • 園長(バス運転手)による園児降車後の確認・点検なし
  • 添乗した女性職員により登園アプリと書面に乗車数6名を入力(いつ入力したかは不明)
  • クラス担当者は欠席等の連絡なく登園していない園児の所在確認せず
  • クラス担任と副担任は女の子がいないことに気付いていたが書面やアプリでの確認や女性職員、保護者への問い合わせはせず
  • 警察は6日業務上過失致死の疑いで幼稚園や園長の自宅を家宅捜索

川崎幼稚園の記者会見

  • 5日本来のドライバーが急遽休みとなり臨時運転手3名にも代行を断られた為、園長が運転代行することになった
  • 午前8時48分園到着。降車後、添乗女性職員、運転手(園長)による降車チェックなし
  • 担任、副担任等の職員は女児は欠席したものと思い込んだ
  • 午後2時10分頃バス車内で倒れている女児を発見
  • 過去に車内に置き去りにした事例はないが、乗せるはずの子を乗せない等の送迎時のトラブルはたびたびあった
  • トラブル時、口頭での指導はあったが再発防止などの職員への周知は十分でなかった
  • 安全管理マニュアルはあったが1年前に福岡県で発生した置き去り死亡事故発生を受けての見直しはなされていなかった

参照:https://www.fnn.jp/articles/-/413657/

関係者への取材記事からの情報

  • 園児6人は別々の場所から乗車。確認表にはそれぞれの乗車予定時刻の記載あり
  • 5日は園の登園管理システムでは園にいない女児が出席扱いになっていた
  • 給食の用意もあったが不在を不審に思う職員は誰もいなかった
  • バスが停められていた駐車場は園から240m離れ、徒歩3分程かかる距離だった。
  • バスは運転手が施錠、バスには窓までラッピングが施してあり、外から様子を確認する事は難しかった
  • 添乗の派遣女性職員は通常は園内での業務と別の曜日の送迎補助業務をしていたが5日は臨時で添乗
  • 本来の運転職員は園児降車後、車内確認を兼ね車内清掃を習慣化していた

Twitterでの保育士のつぶやき

現役・引退後の保育士のつぶやき

人数確認についての強い意識

「朝お子さんをお預かりして帰る時は朝と変わりなく帰る。ベテランの先生に教わったこと。」

当たり前に幼稚園、保育園で先輩から後輩へ指導されている事かと思います。多くの保育士達は幼児の人数確認の重要性を当然の事としている事がうかがえます。

残念な情報も

上記のように幼児を預かる事に強く信念をもって対応している保育士、幼稚園教諭も多く存在することはうかがえましたが、やはり川崎幼稚園と同じような運営を行っている保育園・幼稚園も存在することもまた事実のようです。

なぜ死亡事故はおこってしまったのか?

川崎幼稚園 記者会見での副園長の答弁

川崎幼稚園の副園長は記者会見で以下の4つのミスが重なり死亡事故が発生してしまったと答弁しています。

  • 園児の降車確認をしていなかった
  • 園児の降車時のダブルチェックをしていなかった
  • クラスの補助職員が園児の最終登園状況を確認していなかった
  • 登園予定の園児がクラスにいなかったにもかかわらず、クラス担任が職員室や保護者に確認しなかった

それは本当に「ミス」なのか?

上記答弁の4点は確かに事故に至る原因ではあります。が、これは個人の「ミス」なのか?

静岡県の記者会見、川崎幼稚園の記者会見、取材による関係者からの情報からこれらは単純に「個人のミス」ではなく根本的な「川崎幼稚園」の体質により起こるべくして起こってしまった事故であることが見えてきます。

情報から見えてくるもの

  • 派遣職員の女性は5日は臨時での送迎補助だったが、他の曜日の担当はしている。5日の降車時の動向から、そもそも園児の降車確認は送迎補助職員の業務としてきちんと明示されていない。
  • 通常時の車内確認は運転職員の「習慣」よってなされており、今回のように代行で行われた場合、車内確認がまったくなされない状況ができてしまう。
  • 職員の誰一人も「確認作業」を行っておらず、園として「確認作業」の重要性を根本的に認識できていない
  • 本来は誰よりも園児の人数確認の重要性を認識し、職員に指導するべき園長にまったくその認識がない

安全管理マニュアルはあるとの事ですが、果たして内容はどのようになっているのか?幼児を預かるという性質上、送迎バスの運営だけでも「確認作業」の項目が明記していない事は考えられないと思うのですが、ただ単にマニュアルを作成する義務があるから作るだけ作って形骸化してしまっているのでしょうか?

保護者が子ども達を守るためにできる事

ヒヤリ・ハットの法則

近年安全管理の重要性の認識が高まりヒヤリ・ハット、インシデント・アクシデント等の言葉の認知も広がりつつあるのではないでしょうか?

「ハインリッヒの法則」というものがあります。これは

「1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある」

元々は労働災害のけがの程度を分類し比率をとったものですが、「重大事故」へ至るまでにはより軽微な事例が累積されていることを示しています。

今回の川崎幼稚園の死亡事故についても、今回の会見の情報からも推察されるようにそれを引き起こすまでの軽微な確認ミスは多々散見されていたのではないでしょうか?

保護者としては自分の子に係るものでなくても、それらの情報があれば単なる腹立たしい「ケアレスミス」とせずそれらの事例が園としてきちんと改善なされるのかどうか注視すべきかと思います。

未就園児の保護者の方は見学や、在園中の保護者の方からの情報収集も必須ですね。

また今回のような「車内への閉じ込め」の状態になってしまった時の対処方の情報もありました

終わりに

今回の死亡事故を受けて牧之原市では市内認定こども園「川崎幼稚園」で発生した事故に係る今後の市の対応として文書を出しています。大阪府でもバス登園時の安全確認の徹底と 保育士や運転手の研修実施などを求める通知を出したようです。

保護者の就業化に伴い幼稚園保育園、認定こども園のニーズは増加しています。しかしきちんとした運営管理が行われていない園への公的な指導、監視強化など安全管理についてはまだ十分になされていないと感じます。二度とこのようなことを起こさせないシステムの構築の必要性を感じます。

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