【小児科医ゆうちゃん先生】奇跡の生還!ネフローゼ症候群から腎不全に、そして悪性リンパ腫併発! 

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投稿日:2023年9月7日 | 最終更新日:2023年9月7日

藁にもすがる思いで使用した未承認薬は思いもよらない効果を発揮した。小学校3年生で治療薬の効かない「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」を発症し、母から腎臓をもらうも再発。さらに合併症による悪性リンパ腫により大量出血で命は尽きる寸前に。

【小児科医ゆうちゃん先生】どんな病気だったのか?

概要
  • ゆうちゃん先生こと市川裕太(いちかわ ゆうた)先生は小学校3年生(9歳)の時、治療薬の効かない「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」を発症
  • 末期の腎不全となり小学校6年生で母から腎移植を受けるもSRNSが再発
  • 腎臓移植した為、服用が必要な免疫抑制剤の影響で悪性リンパ腫の一種「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」も発症
  • 打つ手がないと思われたが、他の病気の治療薬「リツキシマブ」が「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」に効いたという海外からの症例報告を見つけた治療チームは当時未承認薬だった「リツキシマブ」を使用することを決断。
  • 「リツキシマブ」が「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」に劇的に効き完治
  • 驚くことに「リツキシマブ」は「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」にも効いており病状が劇的に改善していた
  • 2つの難病を克服した「ゆうちゃん」は”自分と同じような病気の子どもたちを笑顔にしたい”と医師を目指し、現在小児科医として働いている

現在小児科医として働いている「ゆうちゃん先生」こと市川裕太さんは実は子どもの頃命を脅かす病気「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」に罹患していました。

ネフローゼ症候群とは蛋白が尿の中に大量に流出してしまい、血液中の蛋白が足りなくなり(低蛋白血症)になりその結果むくみ(浮腫)が起こる病状の事です。ネフローゼ症候群は小児から高齢者まで全年齢でみられ、年間4000人の方が発症すると報告されています。

このネフローゼ症候群の治療薬はステロイド剤と免疫抑制剤になりますが、「ゆうちゃん先生」のネフローゼ症候群はこのステロイドが効かないタイプ「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」でした。

尿蛋白が多い状態が続くと腎臓の働きがおちたり免疫力が低下し感染症をもらいやすくなります。

「ゆうちゃん先生」は小学校3年生の時、ネフローゼ症候群と診断されましたが、治療薬が効かない為、小学校6年生の時には腎移植が必要なほど腎機能は低下してしまいました。そこで母親がドナーとなり腎臓を移植します。しかし残念ながら半年ほどすると再び高濃度の尿蛋白が出てしまい「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」が再発してしまいます。

その上不運なことに移植手術の合併症である「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」を発症してしまいました。「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」は悪性リンパ腫の一種で当時は死亡率がかなり高い病気でした。

「ゆうちゃん先生」の喉や大腸には腫瘍ができそこから大量に出血してしまい、24時間大量の輸血をしなくてはならない状態になってしまいました。

【小児科医ゆうちゃん先生】未承認薬「リツキシマブ」で奇跡の生還

絶望的な状況の中、「ゆうちゃん先生」の主治医はゆうちゃんを救う手立てはないかと様々な文献や症例を検索し、ついに海外の症例で「低悪性度リンパ腫」等の治療薬「リツキシマブ」が「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」に効いたという文献を見つけます。

しかし、「リツキシマブ」は「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」の治療薬としては日本では当然未承認の為、保険は適応されず自費での治療となります。また海外の症例報告があっただけでそれが「ゆうちゃん」に効くかどうかは未知数でした。しかし他に有効な手立てもありません。そして「ゆうちゃん」の命はもういつ消えてしまってもおかしくない状況でした。

医療チームと両親は相談の上、「ゆうちゃん」の命をこの「リツキシマブ」に賭けることを決断します。

そしてこの「賭け」は見事に的中します。

「リツキシマブ」の投与直後「ゆうちゃん」の口の中から何かの組織がぼろぼろと出てきました。

なんとそれは「ゆうちゃん」の口腔内にできた腫瘍がはがれ落ちてきたものだったのです!

「リツキシマブ」は「効く」どころのレベルではなく「ゆうちゃん」の「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」をなんと完治させてしまったのです!

【小児科医ゆうちゃん先生】リツキシマブの効果、ネフローゼ症候群も改善!

「リツキシマブ」にはその他にも医師を驚かせるほどの効能があることが症例「ゆうちゃん」で明らかになりました。

実は「ゆうちゃん」の体は「移植後リンパ球増殖症(PTLD)」が治っただけでなく、尿蛋白が消え「ステロイド抵抗性ネフローゼ症候(SRNS)」も劇的に改善していたのです。

この「ゆうちゃん」での経験から、医療チームは医師主導で「難治性ネフローゼ症候群」に対する「リツキシマブ」の効果に対する臨床試験を行い、2014年にはリツキシマブは「難治性根ネフローゼ」の治療薬としても日本で承認されました。

実はこの「リツキシマブ」という薬はその他の病気にも効くことがわかり現在では

など様々な病気の治療薬として日本では承認されています。

【小児科医ゆうちゃん先生】3度の浪人を経て念願の小児科医に!

「リツキシマブ」により死の淵から奇跡の生還を果たした「ゆうちゃん」。

その後どうなったのでしょうか?

「ゆうちゃん」は「自分と同じように病気と戦っている子ども達を笑顔にしたい」との思いから医師になる事を決断しました。そして3回の浪人を経験するも諦めず、ついに医学部に合格し2022年にはかつての自身の主治医の下、小児科医「ゆうちゃん先生」として病気と戦う子ども達を診察しています。

「ゆうちゃん先生」自身がかつて体験したからこそ、「治療」を受ける子どもやその保護者と気持ちを共感し、寄り添いながら診療をされています。

【小児科医ゆうちゃん先生】奇跡の生還!ネフローゼ症候群から腎不全に、そして悪性リンパ腫併発! おわりに

自分のものではない臓器を異物として免疫系が攻撃してしまう為、腎臓移植後は生きている限り免疫抑制剤を服用しなくてはなりません。免疫系を抑制するという事は、当然健常な人に比べ感染症への罹患リスクは大きくなります。

コロナ感染が拡大する中、それでも「ゆうちゃん先生」は子ども達と向き合いながら診療をしています。

コロナ感染拡大で、入院時の付き添いも制限され寂しく辛い思いをしている子ども達を見ていたら、きっとかつての自分の姿と重ねてしまいますよね。その辛さを知っているからこそ、自身のリスクを知っていながらも子ども達へ差し伸べる手を引っ込めるわけにはいかないのでしょうね。

「ゆうちゃん先生」は2019年に研修先の病院で知り合った薬剤師と結婚し、男の子を授かりました。

かつて生死の境をさまよった「ゆうちゃん先生」。病気と戦っていたころはこんな未来があるなんて想像もできなかったでしょうね。

「ゆうちゃん先生」が診ている子ども達の中からきっとさらにまた次の「ゆうちゃん先生」が生まれていくのでしょう。

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