膵臓がんはなぜ大分で見落とされたのか。膵臓がんとは?予後はどうなのか?「婚約中の彼女がすい臓がんになりました」youtubeチャンネル『サニージャーニー』みずきさんが32歳の若さで「膵臓がん」その中でも稀な膵腺房細胞癌になったことを告白。彼らの今後は?膵腺房細胞癌とは?転移は?『サニージャーニー』とすい臓がんについて調べてみました。
「あなたの病名は”膵臓がん”です」
車中泊で婚約者と共に沖縄から北海道まで、youtubeでその様子を配信しながら日本一周旅行していたサニージャーニーのみずきさん。その楽しく幸せな旅の途中で体調不良に見舞われ病院へ。
幸せいっぱいの中、32歳という若さで突然予期しない聞いたこともない「すい臓がん」を宣告されたみずきさん。その時の衝撃はどれほどのものだったでしょうか。
車中泊で日本一周。youtube配信『サニージャニー』みずきさん。突然つき付けられた癌宣告
youtube動画配信『サニージャーニー』概要
【こうへい】
- 職業:元保育士
- 出身地:愛知県名古屋
- オーストラリア旅行の資金を貯める為西表島でリゾートバイトしていた
【みずき】
- 職業:元ホテルマン
- 出身地:北海道札幌市
- 北海道の外の世界を見てみたいと西表島のホテルに就職
こうへいさんがオーストラリア旅行資金を貯めるためバイトしていた西表島のホテルで働いていたのがみずきさん。同じ職場で一緒に過ごすうちに付き合う事になった。
二人は婚約し、家を引き払いキャンピングカーで1年間かけて沖縄から北海道まで47都道府県をyoutubeで配信しながら旅行するつもりだった。
サニージャーニーみずきさん 大分県では異常は見つからなかった
「大分県でも同じような腹痛があって、でもその時は大きな病気の可能性はないでしょうという診断だったんです」
実は今回の体調不良とよく似た腹痛をみずきさんは大分県でも起こしていました。こうへいさんとみずきさんの二人は四国の6月ごろ大分県を通っています。その時すい臓がんは見つかることなく、大きな病気の可能性はないと診断されていました。
サニージャーニーみずきさん体調不良 四国愛媛県の病院で
それから5か月後、二人は四国の愛媛県まで来ていました。
愛媛県滞在中の10月12日、みずきさんが立っていられない程のひどいめまいに襲われた為「安静の為、動画配信1週間休みます」との動画を配信します。
その時は頭のCT検査を行いましたが検査の結果、頭には異常はありませんでした。この時点では念のため1週間だけ配信を休む予定でした。
ところが10月20日YouTube動画配信でこうへいさんからみずきさんが入院すること、精密検査の結果次第で長期療養が必要になる可能性がある事が報告されます。
実はみずきさんのめまいの症状は治まっていましたが、別の体調不良を起こし検査をしていたのです。
検査の結果医師から「重大な病気の可能性が高い。精密検査をした方がいい。」と説明され、急遽みずきさんは家族のいる北海道へ飛行機で戻りました。
サニージャーニーみずきさん精密結果の結果 すい臓がん告知
「検査の結果、膵臓がんです、と。」
11月6日の動画配信。みずきさんは自分が「膵臓がんと診断された」と自分自身で視聴者に報告しました。
サニージャーニーみずきさん、がん告知 膵腺房細胞癌とは?大分県ではなぜ見落とされたのか?治療方法や転移、生存率は?
膵腺房細胞がんってどんな癌?
膵臓は胃の裏側に隠れている細長い20㎝ほどの臓器です。すい臓には食物の消化液を作る働きと、インスリンなどのホルモンを作る役割があります。消化液を作る働きをするのが「腺房」という細胞で、この細胞の遺伝子がエラーを起こし発生するのが「膵腺房細胞癌」です。
すい臓がんは大きく4つに分類されます。
膵腺房細胞癌の発生頻度は全ての膵臓腫瘍のうち約0.4%以下というかなり稀な膵臓がんです。早期発見されれば最も頻度の高い浸潤性膵管癌に比べ予後は良好な腫瘤とされていますが、転移が膵臓よりも離れたところへ広がってしまっていて切除ができないなどの場合は予後は良くありません。
現在では化学療法でなどであらかじめ癌を小さくしたり転移した病巣をつぶすことで、手術できなかった症例も手術できるようになってきているようです。
なぜ大分県では見落とされてしまったのか
病院で「お腹が痛いです」と伝えると医師はお腹の痛み方(場所、どんな痛みなのか)や、痛みが始まった時期、お腹の硬さ、腸の動く音、下痢をしているかどうかなどの情報から同じような症状の出る頻度の高い病気から疑っていきます。別の病院で診察を受けているならばその時の検査内容、診断もかなり大きな参考材料になります。
疑った病気の証拠を集める為に、必要な検査(血液検査、レントゲン、CT検査、超音波検査、胃カメラetc)を行っていきます。集まったデータから総合的に判断して診断を下していきます。
また病院の規模によってできる検査できない検査があります。CT装置のない病院ではCT検査のデータを得る事はできませんし、胃カメラのない病院では胃カメラの検査はできません。その病院で集められるデータから診断することになります。
集まったデータからは十分に判断できない場合は、さらに多くの検査ができる病院へ紹介されることになります。特にどのデータにも異常がないようならば「異常なし」と判断されます。
大分県の病院でどんな検査をしたかは不明なので正確な事はわかりませんが、大分県での腹痛で「胃がんや胃潰瘍」などの頻度の高い病気を疑っていた場合検査の中心は胃カメラになります。胃カメラ、血液データなどで異常がなければ「(胃の病気に関しては)ありませんよ」という判断になっていた可能性は十分あると思います。
また、愛媛県の病院では5か月前の「胃カメラで異常なし」という情報があれば胃以外の病気も念頭に置いて検査を行っていた事も想像できます。
膵臓がんってどんな症状があるの?
すい臓は物を言わず、静かに黙っている。
肝臓と膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。この二つの臓器は異常があっても悪化するまで症状が出ない為、症状が出て検査したときには大きくなってしまっている事が多いです。
膵臓がんの場合、初期は無症状ですが進行して癌が大きくなるにしたがい腹痛、食欲不振、腹部膨満感(おなかが張る感じ)、腰や背中の痛みなどが発生しやすくなります。また膵臓はインスリンを作る臓器なので急な糖尿病の発症や悪化などが起こる場合もあります。
肝臓とすい臓は位置も近く機能も関連がある為、膵臓にできた癌が大きくなることで肝臓の機能を圧迫し、黄疸などの肝臓特有の異常症状がでる場合もあります。
膵臓がんを発見する為に必要な検査は?
膵臓がんを発見するために有用な検査は
- 血液検査
- 腹部超音波検査
- 造影CT検査
- 造影MRI検査
があげられます。腹痛の場合比較的簡単に行える検査は超音波検査、CT検査になります。特にCT検査は短時間で肝臓から膀胱までの広範囲を短時間で撮影でき、詳細なデータを集めることができるため臓器の異常が考えられる腹痛の場合には行う病院は多いと思います。
先日1か月の活動休止を発表した中居正広さんも虫垂炎で緊急入院していますが、診断の為に撮影した造影CT検査で虫垂炎以外の病気が見つかった可能性は高いと思います。
《中居正広、癌公表か?》1か月活動休止、活動休止の理由は?体調不良の原因は?盲腸癌?ステージは?
上記検査で異常が疑われた場合はさらに精密検査を行って病気の正体は何なのかを突き止めていくことになります。
膵臓がんはどうやって治療するの?転移がある場合は?
膵臓がんの治療は「手術」「薬物療法」「放射線治療」を行っていきます。
上記表の示すステージⅡB期「がんの腫瘤が大きな動脈を巻き込んでおらず、リンパ節転移が3個以内」までならば手術ができる可能性があります。
現在ではステージⅡB期以上であっても化学療法を先に行い、がんの腫瘤や転移した病巣を小さくすることで手術が可能になる場合もあるようです。
肝臓や肺などの他の臓器へ転移してしまっているなど著しく進行してしまっている場合は手術はせず化学療法や放射線治療、緩和療法などでなるべく苦痛なく生活できる時間を長くすることを目的に治療を行っていくことになります。
みずきさんは転移があるかどうか、あるのならばどの程度まで進んでいるのかをPET検査などで確認してから手術できるのかどうかが決まることになります。
膵臓がんの予後は?
膵臓がん全体で、術後5年生間生き残った人の割合5年存率は20-40%です。
これは2014年のデータですが膵臓がんは発見が遅れる事が多く、診断がついた段階で手術できる患者さんはわずか約20%に過ぎないという現実があります。また切除できても術後の再発率は高く、術後の5年生存率は20-40%と不良です。
上記はすい臓がん全体のデータですが、ではみずきさんの罹患している膵腺房細胞癌の予後はどうなのでしょうか?
膵腺房細胞癌の予後も悪いの?
2007年の日本膵臓学会誌に興味深い論文がのっていました。
膵腺房細胞癌患者115例を調査したものですが手術で癌を切除できた87例の5年生存率は43.9%で、その中でも手術可能とされる「がんが大きな動脈を巻き込んでおらず、リンパ節転移が3個以内」ステージⅡB期までの状態だったならば5年生存率は76.9%とかなり良好な結果であった事が示されていました。
しかしステージⅢ期以降は手術できてもいっきに5年生存率は下がり40%台以下になってしまってしまい、病期により予後には大きく差があるようです。
『サニージャーニー』とすい臓がんについて まとめ
『サニージャーニー』はキャンプカーで沖縄から北海道まの47都道府県を1年かけて旅行する「こうへい」さんと「みずき」さんが運営するyoutubeチャンネルのタイトルでした。二人は結婚を約束した婚約者どうしでした。
日本一周旅行の途中、みずきさんの体調に異変がおきます。検査した結果みずきさんはすい臓がんの中でも稀ながん「膵腺房細胞癌」と診断されてしまいます。
すい臓がんは残念ながら発見が遅れることが多く予後はあまりよくない癌であることがわかりましたが、みずきさんの罹患している「膵腺房細胞癌」に関してはステージⅡB期以内ならば5年生存率が76.9%と予後の期待できる癌である可能性があるという論文も存在することがわかりました。
「こうへい」さんと「みずき」さんは日本一周旅行は治療のため諦めましたが、病気を抱えながら、でもその中で楽しく生きるみずきさんとその隣にいるこうへいさんの姿を今後もyoutubeで発信していきたいと動画で伝えてます。
(2022.11.14追記)
残念ながらステージ4だったとの報告動画が上がりました。すい臓近くのリンパ節と鎖骨のあたりに転移があったとの事です。そのまま何もしなければ4か月。抗がん剤治療をして2年との余命宣告もあったようです。
今後二人は治療の為のクラウドファンディングも予定しています。
癌治療は将来の不安と抗がん剤治療のキツさとの闘いになるかと思います。その中で怪しげな高額トンデモ医療への勧誘、誘惑にさらされることも十分考えられます。多くの人の善意を集めるクラウドファンディング。藁をもつかみたい誘惑にかられることも多々あるとは思いますが、そのあたりの事も十分検討してもらえたらと思います。
まずは医療スタッフと十分意見交換し信頼関係を築き、この先の戦いで二人がよりよい未来を選べるよう祈っています。
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